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(2/3)概日時計の位相応答: 二重ネガティブフィードバックループの機能分化とdead zone形成

日時
2021年 2月 3日 (水) 13:30~
講演者
瓜生 耕一郎 (金沢大学 理工研究域 生命理工学系)
会場
オンライン

地球上の多くの生物は概日時計をもち、細胞内の時間遅れを含んだネガティブフィードバックループが約24時間周期の自律的な遺伝子発現リズムを生み出す。概日時計の重要な性質の一つは、外界のサイクルへの同調能であり、明暗サイクルに対する概日時計の同調能は、短い光シグナルに対する位相応答を観察することで調べられてきた。多くの生物の位相応答曲線(PRC)は、位相前進と後退が起きる時間帯に加えて、光シグナルに対して応答しない時間帯(不応期: dead zone)を含む。そこで我々はPRCの形状を決める因子について数理解析を行った。始めに、二重ネガティブフィードバックループに含まれる二つの転写抑制因子間で発現ピークに時間差がある場合、この二つのループが位相応答において機能分化することを示す。すなわち、哺乳類Period1遺伝子のように発現ピークの早い転写抑制因子の光誘導は、主に概日時計の位相前進をもたらし、Period2遺伝子のように発現ピークの遅い転写抑制因子の光誘導は位相後退をもたらす。次に、転写抑制因子の合成過程に含まれる飽和反応によって、dead zoneが形成されることを示す。哺乳類とショウジョウバエの概日時計を比較することで、光感受性のある生化学反応の次のステップに飽和型反応が存在すると、dead zoneが形成されることが分かった。我々の数理解析の結果は、細胞内の遺伝子制御ネットワークと生化学反応によってPRCの形状が決まり、それによって概日時計の明暗サイクルへの同調能が決まることを示唆している。